インドに暮らして想う事。インドでのパン作り

インドに暮らして想う事&インドでのパンの作り方を配信します。

パンが教えてくれた事

パンは生き物で色々な事を長年かけて教えてくれた気がします。

 

1.小さな事の積み重ねが最終的に大きな違いになると言う事。

パンの製造工程で大事な事はまず原材料の計量

塩は味を左右するだけでなく殺菌作用があるので発酵にも左右するので0.1gをちゃんと量る。

室温を気にして仕込み水の温度、ミキシングの時間、生地の状態、捏ね上げ温度、

生地の発酵時間、発酵室の温度、生地を乾燥させないように注意して、分割する時には細切れにならないように生地を傷めないように分割する。なるべく手粉を使わずきれいに生地を丸める。ベンチタイムを取る。手粉をなるべく使わないように傷つけないように成形して2次発酵させる。

2次発酵中の温度と湿度、発酵状態。

焼成時の温度と時間、食パンなどの型からの取り外し方。焼成後のパンの冷却、包装まで、まだまだ書ききれないほど細かい事を注意して作る事が大事です。

 

一つ一つは小さな事だけどその積み重ねで出来上がったパンは大きく違う。

 

小さな事やめんどくさい事もちゃんとコツコツと行っているか、いないかで、やがて結果に大きな差が出ると言う事をパンに教えてもらった様な気がします。

 

 

2)言葉は通じなくとも心は通じる

 

パンは生き物で言葉は通じないけれど・・

ちゃんとパンを理解してあげて

愛情を持って接する事でちゃんと答えてくれる。

 

それはきっと人間通しでもきっと同じではないだろうか?

そんな事を胸に抱いて

英語もヒンディー語も話せない自分がインドに渡ってきたわけです。

 

人間は複雑でパンみたいにはいかないけれど

それでもそんな自分の気持ちを理解してくれるスタッフにも恵まれて

5年7か月の間やってこれました。

一緒に頑張ってくれて5年以上やってくれているスタッフも数名いて今では自分がほとんど作らなくても自分と同じレベルのパンを作ってくれるスタッフがいます。

 

愛すれば愛される。

憎めば憎まれる。

※例外もありですが・・

 

これもパンから教わった事です。

 

パンを手作りするのは素晴らしい事です。

ふわふわした生地に触って癒されて、

ふっくらと膨らんでくれる姿を見て嬉しく思い、

食べてまた幸せな気持ちにさせてくれます。

 

そんなパンの作り方も書いていきたいと思いながら・・

最近は暑さのせいか疲れてしまってなかなか書けませんが・・

いずれ少しずつ書いていけたらと思っています。

 

 

 

 

 

インドの材料だけで日本のパンは作れるの?

インドに来てインドで日本のパンを根付かせたいと言う思いがあったので

なるべくインドの材料で日本のパンを作るようにしています。

一番の問題はやはり小麦粉です。

 

日本で売られている小麦粉とインドで入手できる小麦粉はどこが違うのか?

日本は目的によって

お菓子作りは薄力粉

うどんは中力粉

パンは強力粉と使い分けるけれど

 

インドの小麦粉は「マイダ」と呼ばれる中力粉のみです。

マイダは中力粉ですがグルテン量は中力粉の中でも多い方だと思います。

もう一つの違いは粉の灰分量です。

日本で販売されている小麦粉は小麦の灰乳部分のみを粉として販売して殻に近い部分はすべて肥料や家畜の餌などに使用していますがインドの小麦粉は殻に近い部分まで粉にして販売している事が大きな違いです。

 

インドのマイダは殻に近い部分が含まれているため穀物臭がします。

雑身が多い分だけパンのふくらみが悪い。

その代りビタミンやミネラルなどの栄養分はインドのマイダの方が多いと言えます。

 

そのためインドの小麦粉で日本のパンを作るためにはちゃんと発酵時間を取ってパンに発酵による風味を持たせるとともにパンをしっかりと膨らませる事が必要です。

 

次にイーストです。

イーストは通常パン屋さんで日本の食パンや菓子パンを作る時は生イーストを使う事が多いです。

インドでもデリーやグルガオンに住んでいる方はModern Bazarなどで購入する事が出来ますが500gパックになっているので使いきれないうちに品質が劣化すると思います。

それとインドで小売されているイーストは物流行程や商品陳列ケースの温度が高いなどの影響で買った時から品質が悪い場合が多いです。

新鮮な生イーストは手でパリッと割れる状態ですが高温に放置されたり製造日から時間が経ってしまったものは自己消化を起こして粘土状になってしまっています。

 

現在Irohaで使用している生イーストはベンダーの冷蔵倉庫に直接ケースごと買い取りに行っています。

 

ドライイースト

インドでもドライイーストは色々なメーカーから販売されているものが売られています。5種類ぐらいを試してみましたが、品質にもばらつきがあり風味も良好とはいえないと思いました。

 

ご家庭でパンを作る場合は日本からインスタントドライイーストなどを購入する方が良いかも知れません。日本では天然酵母をドライにしたタイプのものも出回っています。

 

ドライイーストにはフランスパン・食パン・バターロールなどの糖分が12%以下のパンを作る用のドライイーストと菓子パンなどの12%以上のパンに使用するドライイーストがありますので使い分けが必要です。

 

パン作りのベテランの方はインドに出回っているフルーツなどから天然酵母を起こして自家製酵母を作ってみるのも面白いかもしれません。

業務用には手間暇が掛かり過ぎるのと安定性に欠けるので試してはいませんが、

せっかくインドにいるのでマンゴーからマンゴー酵母を作ってみたいと思っています。

 

インドでパンを作るのにインドで買うのが一番難しいのはイーストかも知れないです。

 

塩はインドのもので全く問題無いと思います。

特にハード系のパンなどを作るのにヒマラヤンソルトはお勧めです。

日本より低価格で入手できるのでありがたいですね。

ただヒマラヤンソルト(ロックソルト)はなるべく細かく粉状になっているものが良いです。手捏ねなどでパンを作る際は塩が溶けきらない事があります。

インドで一番嬉しいと感じた材料がヒマラヤンロックソルトでした。

 

砂糖

砂糖も通常販売されているもので問題ないと思います。

 

バター(油脂) 

インドでちゃんとパンに使えるマーガリンを見た事が無いです。

結局バターを使うのが一番良いと思います。

バターも日本のものと比べると風味が落ちるものが多いです。

輸入品は関税が高いために日本の価格の倍以上の値段です。

 

朗報としては

President(フランスのメーカー)の無塩バターが去年まで輸入品で250gでMRP が499₨でしたが去年よりインドに工場を作り輸入品でなくなったために500gでMRP が250₨に下がり、さらに今月から20₨値下がりして500gで230₨(日本円で360円)まで下がりました。

今までのインドのメーカーのものよりは高品質だと思います。

インドで値下がりをすると言うのはめったにない事です。

このバターがお勧めです。

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乳製品

牛乳を使うのが一番良い気がします。

インドで販売されている牛乳で問題無いです。

粉乳を使用したい場合はネスレのミルクパウダーがスーパーなので売られていますのでそちらで代用してもほとんど問題ないと思います。

練乳などもインドで販売しているものと日本の物であまり変わらない気がします。

練乳もネスレから販売されています。

 

水は家庭用の濾過器(ROなど)で濾過した水を使うのが良い気がします。

ミネラルウォーターなどはメーカにより水の硬度などが違いますので使う水によって生地が締まった状態になったりダレ気味になったり発酵時間などにも影響が出ますので毎回同じ水を使う事が大事だと思います。

 

その他、イーストフードや添加物は一切使用しなくても美味しいパンは作れます。

 

これからパンを作るための注意事項や製造方法なども少しずつアップしていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本語しか話せないでインドに行って大丈夫?

あまり大丈夫じゃありません!

 

自分の場合はかなり周りの人達に助けてもらって5年半も経ちました。

恵まれた環境にあったと思います。

 

もし英語もろくに話せないのにインドに来てしまった場合

恥ずかしがらずに堂々と知っている単語と日本語を混ぜながらでも言いきれば何とか理解をしてもらえます。

一番いけないのが恥ずかしがって口ごもってしまってはっきり言えない事です。

身振り手振りを混ぜながらでもこうしたいと伝えれば少なくとも気持ちで伝わります。

ただ騙してお金を取ろうとするような人も多くいるので、そこは見極めなくてはいけませんが、少なくとも自分は今まで危ない目に逢った事も大金を取られた事もありません。

 

今では携帯の翻訳機なども高性能になってきたようですが

絶対に自分の口で自分の思いを伝えられた方が良いに決まっています。

もっとちゃん若い時に語学を勉強しておけば良かったと思っています。

 

でも、大事な事は言葉が通じるかどうかでは無く、

心が通じるかが大事な事です。

 

語学が達者=コミニケーション能力が高い では無いと言う事。

インド人のスタッフとの信頼関係を築くためには必ずしも言葉が通じるだけではうまくいかないと言う事。

心と心が通じ合ってこそ良いチームワークが生まれるとインドで実感しました。

 

自分はずっとパンの製造をやってきました。

パンも生き物です。

パンにとって良い環境(温度や湿度)を整えて丁度良い発酵状況を見極めて少しでものびのびと育つふわふわのパンに仕上がるように愛情を注ぐとそれに応えてくれます。

きっと人に対しても基本は同じ事なのではないでしょうか?

なかなか人は難しくそんなに簡単なものではないでしょうが・・

 

次からインドでのパン作り、インドの材料でどうやってパンを作るの?

パンの作り方も書いていきたいと思っています。

 

「生きる」・インドに渡る決断

当時、インドで日本のパンを作ってインド人スタッフに指導をしてもらいたいと言う話を頂いていながらなかなか決心がつかないでいました。

 

そんな時に見たDVDが黒沢明監督の映画「生きる」でした。

 

この映画は1952年公開の映画だから今から67年も前の白黒映画です。

最初に1枚のレントゲン写真から始まります。

ナレーター・「これは、この物語の主人公の胃袋である。幽門部に胃ガンの兆候が見えるが、本人はまだそれを知らない」

主人公・渡辺勘治は、ある市役所の市民課長である。机にかがみこんで、次々と機械的に書類に印を押している。時折、生あくびをかみ殺してチラッと時計を見る。
まったく生気がなく、憂鬱な虫のようだ。そのくせ、書類に押す印の位置は正確で恐ろしく速い。つまり、この男は無意味な忙しさに慣れ切っている。

「彼は時間をつぶしているだけだ。彼には生きた時間がない。つまり彼は生きているとはいえないからである」

「だめだ! これでは話にならない。これでは死骸も同然だ」

「いったいこれでいいのか! この男が本気でそう考えだすためには、この男の胃がもっと悪くなり、それからもっと無駄な時間が積み上げられる必要がある」

という衝撃的なナレーターから始まるがその通りに

あと1か月で無欠勤のまま定年を迎えると言う時に休みを取り病院に駆け込み検査を受ける。

胃がんが悪化していて余命3か月から4か月である事を知り死の恐怖におびえる渡辺。

病院の外へ出ても、往来の騒音が聞こえないくらいのショックだった。
まず頼りとするのは家族である。彼は、早くに妻と死に別れ、男手1つで息子を育ててきた。息子だけが明かりである。

しかし息子は冷たかった。

渡辺は、布団の中にもぐりこみ、うめくように泣くだけでした。

自分は何のために仕事を黙々としていたのか?

いっそ今まで貯めたお金を全部おろして遊んでやろう!

そう思って夜の街に出てもどんなに遊んでも気持ちが晴れる事はなく

もがき苦しんだ結果「人のために役立つ仕事をすれば、生きる喜びが味わえるのでは」 と思い立つ。

今まで可も無く不可もなくめんどくさい事やもめ事は見て見ないふりをしていたが住民の陳情に応え、汚いどぶを埋め立てて、公園を造ろうと動き出す。

今までとはまるで別人のように必死に公園を造るために動き回り5か月で汚水溜まりをきれいな公園に造りあげる。

自分が造り上げた公園のブランコに揺られ歌を歌いながらこの世を去る。

 

なんとも言えない感情がこみあげてこの映画をみてインドに行って日本のパンをインドで作ってみようと言う気持ちになった。

60年以上の時間を越えて人に感動を与えられる映画って素敵。

自分もそんな仕事がしたい!

インドで日本のパンをインド人スタッフに指導して

自分が教えたインド人の職人がまたその次の世代に日本のパン作りを指導して孫弟子が作ったアンパンやメロンパンを食べて60年後のインド人の人達が感動してくれるのではないだろうか?

そんな思いを胸に抱いてインドに渡ってきたわけです。

今では5年以上自分と一緒にパンを作ってきたスタッフが2名、4年勤めてくれているスタッフが2名、3年勤めてくれているスタッフが2名、

自分が作らなくても毎日同じ品質のもを作ってくれるスタッフが育っている事がとても嬉しく。

夢の途中の様な気持です。

そんなスタッフに囲まれているからインドから離れられないのかも知れません。

 

 

 

 

 

 

「変わり者」は褒め言葉!

日本でちゃんと会社に勤めていたのに

急に会社を辞めて

妻を日本に置いてインドに出てきてパンとお菓子を作っている自分は充分に変わり者だと思う。

 

※念のために書いておくけど

30年間以上日本で頑張って仕事をしてきて

このまま人生が終わって行く事に寂しさを感じ妻に相談したところ

今まで本当に頑張ってくれた。

これからは自分のやりたいと思う事をやって思い残す事のない人生にした方がいいよ。

応援するからと言ってくれたからインドに来る決断が出来たのだけど・・

 

それでも初海外がインドで英語もましてやヒンディー語も喋れる訳でもないのにいきなりインドに来る事を決断した自分は充分変わり者だと思う。

 

それで辞書で「変わり者」っていったいなに?と思って調べてみました。

・性質や言動などが、一般の人と違っている人。変人。奇人。だそです。

 

それでは変わり者の反対語はなに?って調べてみたら「常人」だそうです。

では「常人」ってなに?と思って調べてみました。

・才能や考え方などが普通の人。並みの人。じょうにん。

 

なんだ。変わり者の方素敵じゃない!

 

自分みたいな変わり者は多様性の国インドがとても暮らしやすいのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

わがままに生きる。

インドでは自分が違うと思う事ははっきりとNO!と言わないとダメ

こうしてほしいと思う事ははっきりと自己主張をしないとダメ

誰かが察してくれるなんてことは皆無だと思う。

 

これは嫌だ!こうしたい!って自己主張をする事は日本的にはわがままなようだけど、我ままに生きるって素敵な事だと思うようになりました。

 

インド人は間違った事をしてしまっても素直にごめんなさいを言わない

言い訳と屁理屈を並べて自己主張をします。

そこにはっきりダメだしをしないといけない。

日本人のお客様の対応をする仕事なのでお客様にすみませんが言えないといけない。

そこを理解してもらうのが大変。

一歩も譲らずダメだしをし続ける根気、忍耐が大事。

もういいやって思ってしまったらダメ!

 

たとえごめんなさいやありがとうを言えたとしても心のこもっていない言葉は意味が無い

まずは自分が実践して後姿を見せてわかってもらうしかない。

それでもすべての人がわかってくれるものでもない。

毎日はっきりと自己主張をして

大声で怒って

日本ではありえなかった自分の一面を見る事が出来るのが

インドです。

AI(人工知能)に取って代わられる職業って

機械や人工知能に奪われる職業とか良く聞くけど、本当?

 

機械や人工知能に仕事を奪われる人じゃない?

 

人工知能の記憶能力や計算能力は人間をはるかに越えている。

学習能力もありどんどん知識を積み上げていく能力もある。

単純作業のスピードも人間よりはるかに早い

 

車の運転をAIに任せられるようになるのも近い未来。

AIは居眠り運転もよそ見運転も飲酒運転もしなければ疲れ知らず。

 

唯一人間が機械や人工知能と違って勝負できるところがあるとすれば心のこもった仕事をしているか?と言う事だと思う。

 

自動演奏のピアノがどんなに完璧でミスタッチ一つ無くパーフェクトな演奏をしたとしても

人の心を感動させる演奏を出来るのはやはり人。

自動演奏のピアノが完璧でも人を感動させてくれるピアニストは職業を奪われない。

 

これからはどれだけ心のこもったサービスを提供できるか?

心のこもったものづくりができるか?

心のこもった仕事をしている人が人工知能や機械に仕事を奪われない人で

指示通り、マニュアル通りに耽々と仕事をこなしているだけの人が人工知能や機械に仕事を奪われるのではないだろうか?

 

こう言う事を考えて働き方を考えるのが本当の働き方改革ではないだろうか?